リハビリテーション部のニアミスとインシデントへの対策

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これまでの経緯


 リハビリテーション部では、2000年頃からオカレンスレポートの形で、患者様への不利益・迷惑、不慮の問題、人としての思いやり・優しさ・配慮などについて考えてきました。当時は、ニアミス・インシデントの考え方が一般的ではなく、これまた更に輪を掛けて一般的ではないのですが広義のエコ対策(省エネだけのことではありません)として、対処してきたのです。しかし、他聞に漏れずエコ報告も、職員個人間の認識の違いや、マスコミの「省エネとか人に優しい環境」とかといった狭義のエコ対策が邪魔をして、なかなか上手く機能出来なかったことが事実だったのです。
 そこで、2003年頃からエコ対策は狭義のエコ対策に限定することとし、医療事故やニアミスに関しては医療関連のオカレンス(事象)として取り上げることにしました。2005年になり院内に医療事故対策委員会が設置され、看護部を中心とする他部署との間に医療事故対策関連用語に対する認識の違いや理解の違いがあることが明らかになってきたのです。そこで、リハビリテーション部としては部署内の認識の程度を明らかにすることで、他部署との認識のずれや、自身の考えの甘さなどを検証しようという動きになりました。「看護や医師と私たちでは認識のあり方が違う」などと言っている場合ではないのです。共通した認識を育むことは困難かも知れませんが、見識のある専門家として行動したいとの思いは全ての部署や職員に共通するものだから何とかしたいという思いが湧き起こってきたわけです。



そこで・・・、 オカレンスレポートについて、ご存じの方も多いかと思いますが、

 米国では、病院の事故・ニアミス関連報告としてインシデントレポート(incident report )が一般的です。これは行ってはならないことをしてしまった場合、起きてはならないことが起きてしまった場合、逆に本来やるべきことが行われなかった場合などに、医療従事者が自主的に報告するものです。インシデントレポートを報告するか否かは、基本的には報告者の判断に任されており、また、この報告の中には事故もニアミスも含まれているので、その内容や事の軽重も様々なものとなります。そのため、ニアミス・インシデントの担当係や部署の責任者、そして病院として速やかな情報収集と対処が必要となるような重大な出来事については、あらかじめ各部署で報告事例の範囲や内容を定めておく必要があります。このような事故や事態が発生した場合には、必ず直ちに関係する責任者に報告するというオカレンスレポート(focused occurrence report)の体制を作っておくことがが有効であると考えられています。
 2004年に院内研修会(内輪の勉強会です)で医療事故関連の研究報告をした部署がありましたが、その時に堀木がオカレンスのことを口にしたらリハ部の職員以外は誰も知らなかったことがありました。最近では、決してこのようなことはないのですが、オカレンスについてはリハ部の中でも再確認を繰り返していくことが必要だと考えています。それは、医療や社会背景などは日々移ろいでゆくものだからです。


             (リハビリテーション部での医療関連事故の概念図)
 


リハビリテーション部で「オカレンス・レポートで報告すべき事例」としている事

 この中には、患者が傷害を被っていないものや,通常,医療事故という枠組みで考られていないような不可抗力も含めています。
(以下のオカレンスとしてレポートすべき項目はYoungberg BJ. The risk manager’s desk reference. Maryland:Aspen Publication;1994:44を参考にして堀木が2002年にリハビリテーション部のために作り上げたもので、院内医療事故対策委員会で指定しているものではありません)

フォーカスト・オカレンス・レポート(focused occurrence report:注意すべき出来事の報告)の項目
01. 治療目的(OT・DC処方)での目的に、まったく逆の反応を誘発し、そのことが結果的に患者の人命に関わる事態となった。
02. 心肺機能に機能的問題を呈するような予期せぬ事態が起こった。
03. 結果的に生命に関わる事として処置を必要とするような事態。(心機能、誤嚥、低血糖、怪我、感染、日射病、熱中症、脱水症状、熱傷など)
04. 予期せぬ、アプローチや治療的関わりのやり直し。
05. 職員の思いこみによる、援助方法の間違いや、対象患者の取違。
06. 転倒や疾患別精神症状など、医学的管理対象となっている症状への誤った対処。(医学・医療準則に沿わない)
07. 治療に用いる用具・設備・備品の管理や取扱のミスによって心身の安全性が危険にさらされる。(さらされなくても問題が有ればインシデントとして報告すること)
08. 上記備品や消耗品の治療開始前後での数量不一致。(消耗品在庫リストとの不一致も含む)
09. 予想(治療仮説)以外の、生活に問題を引き起こす精神症状や身体の反応があった。
10. リハビリテーション導入とその内容に同意が得られていない。
11. 個人情報、患者の権利についての説明と同意が行われていない。
12. リハビリテーションや検査中の備品や用品の破損や損壊。
13. リハビリテーションや検査中の備品や用品の破損や損壊による治療や援助の中断、医療事故の発生。
14. 清潔区域や物品の不慮の汚染。(病害虫、汗や毛髪・涎などによる汚染、不衛生な状況での使用など)
15. 作業種目遂行に伴う身体の損傷。(歯牙、爪の損傷,誤嚥など)
16. 生命の危機につながるような医療行為以外の事故。(マスターキー、施錠箇所、刃物や電動器具など危険用品の管理不全など)
17. 低血糖発作予兆の観察や経口による挿管等の麻酔後の注意義務におけるエラー。
18. 有機溶剤などの危険物による損傷など。
19. 危険物や要管理物品の無断持ち出し。
20. アレルギーとアレルギー症状、ぜんそく発作への注意、観察、対処のエラー。
21. OT室などへの移動及び搬送中に起きた患者の傷害。
22. 報告に対し対応策やシステムの検討を加え善処したにもかかわらず、対策が功を奏さなかった。
23. 他部署からの事故防止に関する指摘に迅速な対応をしなかった。
24. 報告すべき項目の不注意による失念。あるいは決められた報告手順にそって迅速な対応をしなかった。
25. 苦情やクレームへの対処やミスへの謝罪が不適切なために病院や専門職としての個人に不信感を抱かせた。

※この他の項目については、リハ部会議の次第により加えていきます。(2005.5現在)
※2005.5.27:項目03,17,20の一部を修正(小浜NS感謝です)。項目23を追加。
※2005.11.2:項目16.の一部修正。24.の追加。
※2006.3.20:項目25を追加。


報告の手順とその後


患者の人命に関わるような事故、重大な人権侵害に当たる出来事は、直ちに部署長を通じ関係部署長、病院長に報告します。その際には、OT室緊急時対応マニュアルに沿って行います。
これ以外の、急を要さない報告については、翌日のリハビリテーション部の朝礼までにニアミス・インシデント係が発生数と概略をまとめ、報告者が内容について口頭で報告します。
以上の、報告はとりまとめた後にニアミス・インシデント係が医療事故対策委員会へ提出します。
報告用紙は、医療事故対策委員会のものを使いますが、記載項目等についてはマネージメントの都合により変更の可能性もあります。
リハ部内のレポートは、専用のファイルに綴ってありいつでも閲覧出来るようにしてありますが、患者さんや職員の個人的重大な秘密や尊厳に関わる内容のものは医療事故対策委員会のみでの管理とします。
 ※各部署長は、医療事故対策委員会の委員であり、各部署のリスクマネージャーでもあります。気軽に相談して下さい。