レク部会主催 レクリェーション研修会
(医)和風会 加世田病院 OT 堀木周作
6月21日の鹿児島アリーナは、それまで連日降り続いていた雨も少しだけ小降りとなって周囲の建物や公園の草木もしばしの休憩をとっているようでした。そのような中で此度の鹿児島県精神病院協会主催のレクリェーション研修会が開催されました。
午前中は、鹿精協ホストの先生方の挨拶に続き、各支部で発表依頼を受けていた4つの病院からそれぞれ実践発表がありました。
加世田病院からはACT-Jに謳われているリハビリテーション援助を例に挙げながら各項目とレクとの接点とそのときの工夫について、また家族支援や家族心理教育の機会設定とレク時の同時開催について、それぞれ拠り所としている根拠を紹介しながら併せて実践紹介をさせていただきました。
ところで、今回の4演題の発表者は全て作業療法士(以下OTR)でした。また、全参加者127名中27名がOTRということで、レク活動におけるOTRの果たすべき役割比重が近年増してきていることを象徴しているかのようでした。このことについては昼に行われた発表者とホストの先生方とを囲んだ食事会の中でも話題となりました。すなわち、近年県内へのOTRの就職数が増え、OT士会員数は既に800名を超えており今年は900名に手が届こうとしていること、精神科のOTRの伸びは急峻ではないが順調に漸増していること、精神科の各病院でどの程度数のOTRが実際に勤務しているのか鹿精協や作業療法士会ではきちんと把握していないこと、鹿精協のレク部会をさらに活動的に発展させ、時勢に合ったものとすべくOT部会やケースワーク部会のようなものも構想してゆく必要があることなどについて話がなされました。発表者は全てOTRでしたから、こうした話題にこれからのレク関連活動と作業療法のより良い在り方について、それぞれが新たなビジョンを持たざるを得ず、レクと作業療法の今後について考えさせられる良い機会になったのではないかと思います。
さて、いよいよ午後からは県レク協会の佐土原さんをお迎えしてのニュースポーツ。この時間の主題は「高齢者レクリェーションとニュースポーツ」です。7つの種目が準備され、耳慣れないものばかりですがフロアカーリングの「フロッカー」、シャッフルボードを変形した「ゲーゴルゲーム」、輪投げとフリスビーが合体したような「スカイクロス」、加世田病院では既に15年前自作していたパターゴルフとパチンコの偶然性を兼ね備えた「スカットボール」、投擲ゲームの「バッコー」、卵形ボールのコントロールの難しさを楽しみ競う「オーバルボール」、羽根飾りの付いた駒を投げてミニ陣取りでもするかのような「羽根っこゲーム」などを体験するものでした。これらの種目を他の病院の職員の方々と混じって一緒に楽しみました。各コーナーでは患者さんの体力や知力に合わせた段階付けや導入方法の工夫、自作や代替手法の可能性について活発に話をしていました。この他にも「指遊び」や「ティッシュをつかった遊び」などの紹介があり、ウォーミングアップやちょっとした気分転換の手段として用いていくことなどを再確認して終了となります。
全てのプログラムが終わり閉会式。ファミリーホスピタル薩摩の田中先生からの総括です。特に、「自由参加」という言葉の持つ誤解されやすい部分について、自己決定が困難な患者さんへの援助が無計画に行われることがないようにとの警鐘でした。それまで、先生がおっしゃったことは当たり前の事で既知の共通認識であろうと思っていたのですが、人間のやることや複数の人々によってなされることは楽な方向や個人的善意に向かいがちだということもあります。「自由参加のレク」の話を聞いた他の参加者が、自我機能が不安定で認知能力に問題があったり自我境界が不鮮明でレク参加の選択や決定を求めることによって不安を起こしてしまう患者さんに対して、「私たちは患者さんの自主性を尊重していますから、参加したい人は自由にどうぞ」「やりたいように勝手にして良いのですよ」などといったような間違いが起こらないとも限らないということです。
わたくし的には、行うべき援助の背景や根拠としている理論的枠組みやモデルをわかりやすく他の関係者へ伝えたり関係者向けの教育を丁寧に行ってゆくことの大切さを、OTRをはじめとするレク関係の諸氏に啓発してゆく動きが大切であると自戒した総括でした。
閉会式の終了後は、準備に奔走されたファミリーホスピタル薩摩の職員の方々に感謝しながら来年の研修会に期待しつつ会場を後にしました。帰る途中カフェに立ち寄り侃々諤々の議論を行ったのはたぶん私たちだけではなかったでしょう。
附)加世田病院の発表資料については、加世田病院リハビリテーション部ホームページにアップロードしてあります。関心のある方のご意見をお待ちいたします。拝